人間が自分の周囲や空間の位置を把握する際には、眼から得られる情報、内耳(半規管や耳石)の情報、さらには手足の関節などで感知された情報を活用します。これらの情報は脳に伝えられて統合し、平衡感覚がコントロールされるのですが、何らかの要因によって感覚の不一致が生じることがあります。その結果、めまいや平衡障害が生じてしまうのです。
めまいは内耳、手足の感覚、脳など様々な部分が原因になるため、治療を進めるためにはどこに原因があるか調べる必要があります。症状のパターンに加えて、「眼振」と呼ばれる眼の動きや、体の重心を計測することで原因を診断します。
主なめまいの症状
めまい症の中で最も頻繁に見られる疾患です。頭を動かしたときに、周囲の人や物が動いて見えたり、自分自身が回転しているような感覚が起こった場合、この疾患の可能性があります。具体的には、鏡を見たときや、物を取ろうとしゃがんだとき、急に後ろを振り向いたときなどに、周囲と自分との位置関係を正確に認識することが出来なくなってしまうのです。
年齢が高くなるにつれて罹患率も高くなっていき、特に女性に多く見られます。通常は1分ほどじっとしていると、めまいの症状は治まるのですが、なかには数分間以上も続くこともあります。
主な症状は、自分や周囲が回転しているような感覚、フラフラする感覚のほか、吐き気や嘔吐、頭痛などです。もっとも、めまいなどの感じ方は個々人によって異なります。ご自身の感覚で「いつもと違ったふらつきがある」と思われた方は耳鼻科を受診し、必要な検査を受けるようにしてください。
治療に関しては、主に浮遊耳石置換法を行います。頭を動かして内耳にある耳石を動かし、正しい位置に調整するのです。約90%の方は、この手技によって症状が改善します。一度の治療で改善しない場合でも、数回繰り返すことによって治るケースが大半です。
突然、周囲の景色が回って見えるような感覚におそわれる疾患です。数十分以上も続く激しい回転性めまいに加え、難聴、耳鳴り、耳閉感の症状も現れます。この他、吐き気や嘔吐、頭痛、耳の圧迫感などを伴うこともあります。20~50歳ぐらいの方が発症するケースが多く、男女ともに罹患しますが、特に女性で多く見られます。また、ストレスや気圧の変化をきっかけに症状が繰り返すことが特徴です。
治療に関しては、メニエール病のリスクを高める塩分、アルコール、カフェインの摂取を制限し、制吐薬や抗めまい薬を投与します。めまい発作を予防するため、浸透圧性利尿薬もよく用いられます。さらに抗不安作用のある薬を併用して症状を緩和させます。また、日常生活上の注意点として、水分をしっかり摂り、適度な運動をし、十分な睡眠をとることが症状の予防につながります。