耳鼻咽喉科坂口クリニック

きこえ・補聴器外来

補聴器の作成・調整

難聴などによって耳のきこえに問題が生じている方は、補聴器を使用することによって聴力を補える可能性があります。特にご高齢の方では、本人が自覚しないまま難聴が進み、また難聴を放置すると認知症やうつ病を発症しやすくなると言われているため注意が必要です。また、お子様の難聴は分かりにくいことが多いのですが、気付かれずにいると言葉の発達に影響することがありますので、できるだけ早く発見し、必要な場合には補聴器をつけてあげる必要があります。なお、補聴器は医薬品医療機器等法における管理医療機器(クラスⅡ)に指定されておりますので、医療機関や補聴器専門店などでの調整が必要です。

当クリニックでは、お子様からご高齢の方まで、補聴器についてのご相談を受け付けており、個室の相談室もご用意しております。必要な診察を受けていただき、難聴に関する診断を行うことにより、個々の患者さまにとって最適な補聴器を作成・調整することが出来ます。さらに、アフターケアについても責任をもって対応しておりますので、日常生活で耳のきこえに悩まれておられる方は、お気軽にご相談ください。

補聴器のご相談の流れ

ステップ1:診断

耳の状態や聴力などの検査を行って難聴の診断を行い、補聴器の必要性や適応の有無を判断いたします。

ステップ2:ご相談

診断結果に基づき、補聴器に関する相談・説明・試聴などを行います。
※補聴器は、使用を開始した後もしっかりとアフターケアしていく必要があります。当クリニックでは1か月以上の試聴を行っていただき、その間も問題が生じていないか確認していきます。

ステップ3:補聴器の製作・調整

補聴器をご希望になられた患者さまには、補聴器を製作し、さらに調整を行ったうえでお渡しいたします。その際には、取り扱い方法などもご説明します。
※難聴の程度によっては、身体障害の認定を得ることが出来ますので、補聴器の購入に際して公費補助が受けられるケースもあります。

ステップ4:アフターケア

日常生活での使用状況に合わせ、定期的に微調整やお掃除、点検を行います。

突発性難聴の治療

突発性難聴は、特にきっかけがないにもかかわらず、突然に片耳が難聴になる病気です。難聴以外に、耳鳴り、耳の閉塞感、めまいなどを伴うこともあります。日本では年間35,000人程度がかかるといわれており、難聴の原因としてかなり頻度の高い病気です。詳しい原因はまだよくわかっていませんが、ウィルスや内耳の血流障害などが原因になって内耳が障害されると考えられています。

突発性難聴は初期の治療で改善しなければ、後遺症として残ってしまう可能性があります。そのため、発症に気づいたら、できるだけ早く治療を開始することが大切です。特に発症から1週間以内に治療を開始すると、治癒率が高くなると報告されています。治療には副腎皮質ステロイドという薬が使われ、投与法としては点滴、内服、鼓室内投与などがあります。特に近年では、副作用が少ない投与法として鼓室内投与療法が注目されています。

また、突発性難聴に似た症状をおこす病気として、メニエール病、外リンパ瘻、聴神経腫瘍といった病気もあります。これらの病気では突発性難聴とは違う治療が必要になりますので、聴力や平衡機能を検査して正しい診断をつける必要があります。

突発性難聴に対するステロイド鼓室内投与療法について

副腎皮質ステロイド(ステロイド)は突発性難聴に対して最も効果が高い薬ですが、長期間使用すると、免疫力の低下、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、胃潰瘍など様々な副作用が出ることがあります。そこで、近年では副作用を抑えながら効果を出す方法として、鼓膜の内側にステロイドを注射する鼓室内投与という治療が注目されています。

近年の研究で、ステロイド鼓室内投与療法は、点滴や内服などの全身投与療法と同程度の治療効果があることが示されています。また、米国の突発性難聴の診療ガイドラインでは、初期のステロイド全身投与療法で効果が見られない症例に対しては、追加治療として鼓室内投与を実施することが強く勧められています。

方法としては、まず鼓膜に麻酔を行い、細い針で鼓膜を穿刺して鼓室にステロイドを注入します。その後にベッドの上でしばらく横になって、内耳にステロイドが吸収されるのを待ちます。この治療は、効果が見られる限り何度も繰り返して行うことができます。突発性難聴に対する通常の治療で効果がなかった方も対象になりますので、難聴や耳鳴でお困りの方はお気軽にご相談ください。

難聴の手術治療

「難聴」には、手術が適応となる疾患とならない疾患があります。外耳や中耳に原因がある難聴は「伝音難聴」と呼ばれており、多くの場合、手術などによる治療ができます。このような伝音難聴を生じる病気には滲出性中耳炎、慢性中耳炎、耳硬化症などの病気があります。鼓膜が損傷して穴があいていたり、年齢とともに難聴が進行したような方の中でも、伝音難聴であれば手術により改善できることがあります。

当院ではこの伝音難聴の手術治療を日帰りで、または当院が開放病床利用施設に認定されている近江八幡市立総合医療センターにて院長が手術治療を行っております。なお、伝音難聴の手術治療の内容は、鼓膜を形成する、チューブを留置する、または中耳の音を伝える骨を形成する、等となります。鼓膜の形成については、2019年12月に認可された新規の鼓膜形成用素材であるリティンパ®️を用いた治療も行なっています。

リティンパ®️による鼓膜穿孔閉鎖術について

慢性中耳炎や鼓膜の外傷などによる鼓膜穿孔は、難聴、耳の閉塞感、耳鳴り、耳だれ(耳漏)、耳の痒みなど様々な不快な症状を引き起こします。また、穿孔を放置すると、外耳道から細菌が容易に中耳に侵入し、感染を生じて穿孔が拡大し症状が増悪することがあります。そのため、鼓膜穿孔はできるだけ閉鎖して症状を改善し、病状が進まないようにする必要があります。当院では、このような鼓膜穿孔を閉鎖する治療として、鼓膜再生のために新規開発された素材(リティンパ®️)を用いた鼓膜穿孔閉鎖術を行なっています。

リティンパ®️による鼓膜穿孔閉鎖術の原理

穿孔部に鼓膜再生の土台となるゼラチンスポンジを挿入し、内部の細胞増殖因子により鼓膜再生を促します。

リティンパ®️は傷の治癒を促す薬剤を染み込ませたスポンジのような素材で、鼓膜を再生する働きが確認され、2019年12月から世界に先駆けて日本で発売が開始されました。このリティンパ®を用いることで、鼓膜の穿孔に素材を貼り付けて鼓膜を新たに再生させる新しい治療が行えるようになりました。リティンパ®️を使った鼓膜穿孔の治療は、従来の鼓膜形成術に比べて、皮膚を切開する必要がなく、局所麻酔による短時間の日帰り手術で済みますので、患者さんの負担を大きく軽減することができます。さらに国内での臨床治験において、手術の成功率は従来の鼓膜形成術に遜色なく、なおかつ成功した場合の聴力回復の程度は従来の手術に勝ると報告されています。なお、手術には健康保険が適用されます。

リティンパ®️による鼓膜穿孔閉鎖術の方法、対象者

手術は外来で顕微鏡を用いて行います。手術時間は30分程度です。

穿孔縁を切除し新鮮な創にする

リティンパを穿孔につめる

手術の対象となる方は、鼓膜の穿孔が外耳道から確実に見えて、鼓膜より奥にある中耳の状態が良好な方になります。これらの条件にあわない方は、従来法での鼓膜形成術が必要になることもあります。鼓膜穿孔による慢性的な難聴や耳漏にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。


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